夏休みを前にして一「タラントン」を育てる夏に一

 日に日に暑さが増してきました。子どもたちも、そろそろ夏休みを心待ちにしていることと思います。ここまで、保護者の皆さまの温かいご支援のおかげで、子どもたちは学習や行事、友だちとの関わりに一生懸命取り組むことができました。あらためて、心より感謝申し上げます。

 さて、6月号でも少しご紹介しましたが、聖書の中に「タラントンのたとえ」というお話があります。このたとえは「神さまから与えられた自分の力や役割を、恐れずに活かし、育てていくことの大切さ」を伝えています。このメッセージは、今を生きる私たちや子どもたちにも、しつかりと問いかけてくれるものです。

 子どもたち一人ひとりにも、神さまから素晴らしい「タラントン(才能や資質)」が与えられています。勉強が得意な子、体を動かすのが好きな子、人の気持ちに寄り添える子、細かなことに気づける子、夢中になると驚くほどの集中力を発揮する子・・・。それぞれの「その子らしさ」は、学校の成績では決して測ることのできない、かけがえのない宝物です。

 学校生活では、どうしても教科学習が中心になりますが、夏休みは子どもたちが自分のタラントンとゆっくり向き合える貴重な時間です。たとえば、こんな体験はいかがでしようか。
・図鑑を片手に、近所の昆虫を観察してノートにスケッチを描く
・家の手伝いを通して、料理や掃除の大変さに気づく
・毎日日記を書いて自分の思いや考えを整理する
・図書館で好きな本を見つけ、空想の世界にひたる・工作や自由研究にじっくり取り組む

 こうした体験は、テストや通知表には載らないかもしれませんが、確かに子どもの心に根を張り、これからの学びや人生に大きくつながっていくものです。そして、「自分にはこんなことができるんだ」「これが好きなんだ」と実感できたとき、その経験が子どもたちにとって、何よりも大きな力になります。

 どうかこの夏、お子さまが「やってみたい」「気になる」と思っていることに、そっと耳を傾けてあげてください。うまくいくことを目指すより、たとえ途中でつまずいても、「一緒に笑える時間」をたくさん持っていただけたらと思います。そんな親子の温かい関わりが、子どもたちにとって、大きな安心と勇気につながっていきます。

 子どもたちは、失敗や回り道をしながら、少しずつ自分のタラントンを育てていきます。タラントンは、誰かと比べるものではありません。その子が「自分の持っているものをどう使うか」で、はじめて輝きます。

 この夏休みが、子どもたちにとって、自分のタラントンに出会い、育てるための豊かな時間となりますように。そして、夏の経験を胸に、また9月に元気いつばい登校してくれる日を、教職員一同、楽しみに待っています。

校長補佐 池内 清
(学校だより けやき 第559号2025年7月17日発行)