いつも塩で味付けられた快い言葉で語りなさい。
(コロサイの信徒への手紙4章6節)
今日から新年度が始まりました。始業式の礼拝で私は上記の聖書の言葉から、「今年はみんなで紳士、淑女であることを心がけよう。」と語りました。紳士、淑女であるということは、身だしなみは大切です。私学で、制服もある聖学院小学校の児童には身だしなみをきちんとしてほしいとの願いは持っています。けれども、真の紳士、淑女であるために必要なのは、身だしなみに象徴される外面よりも、内面にあるのは言うまでもないことです。大切なのはその振る舞いであり、言葉です。そして、これは聖学院が一番大切にしている聖書の言葉、「自分を愛するように、あなたの隣人を愛しなさい」とあることとも深く結びついています。
新型コロナウイルス感染拡大は私たちの生活にも大きな悪影響を与えました。自らが感染した り、家族が感染したり、濃厚接触者となった人々は言うまでもなく、全ての人が新型コロナウイルスによって何らかの影響を受けたと言っても過言ではないと思います。そして、その中で私が一番心配なのは子ども達のこと、特に心のことです。この二年間、新型コロナウイルス感染拡大のために、休校や、学年閉鎖、分散登校、短縮授業がありました。確かに授業時数も減ることになりましたので、学習面でも影響があったのは事実です。学校としてもその影響をきちんと見極め、対応しなければならないと考えています。けれども、心への影響は目には見えにくいものです。また、その影響はすぐには表れないこともあります。
私は小学校の役割とは、心を育てることと、学力をはじめとして小学校で身につけるべき力を育てることが半々だと言い続けてきました。そしてその心とは、自分だけでなく他者を大切にする 心、すなわち「自分を愛するように隣人を愛する心」です。それは友だちや教職員といった他者と一緒に生活することによってしか育ちません。顔と顔を合わせ、その仕草や表情からも相手の心を知るといった経験を続けることが大切なのです。例えばSNSやメールと言った文章のやりとりではそれを読んだときの相手の表情は見ることができません。ですから、読んだ相手の心を想像し、そこで使う言葉や言い回しは選ばなければなりません。そんなときに発揮すべき想像力は顔と顔を合わせて相手の心を知る経験なくしては育たないと思います。だからこそ、学校を開き続けることを大切にしてきたわけです。それでも休校、学年閉鎖、短縮授業をせざるを得なかったのですから、結果として子ども達は友だちと一緒に過ごす時間が減ってしまいました。言い換えれば心を育てる時間が減ってしまったのです。
そこで、この一年、心を育てることに一層力を入れたいと思います。そのことの第一歩が冒頭の「小さな紳士、小さな淑女になろう」です。気持ちのよい言葉、態度は互いを大切にする第一歩です。もちろん、そのためには、周りの大人が子ども達を尊重し、適切な言葉、態度で接することが大切であることは言うまでもありません。まず、教員達がそうすべきであることを肝に銘じて一年を始めたいと思います。
校長 佐藤 慎
(学校だより けやき 第522号2022年4月6日発行)