後期が始まり、約1ヶ月が経ちました。今年は酷暑で、10月まで30度越えの暑い日が続きましたが、やっと秋らしい気候を感じるようになりました。
気持ちの変化には様々な要因があります。気温や天候の変化もその一つで、暑いとイライラしたり、寒いとさみしさを感じたりします。このような場合は、体が快適だと感じるよう環境を整えることで、ある程度解消できます。では、それ以外の場合には、どのような方法があるでしょうか。
その一つがアンガーマネージメントです。「アンガー」=「怒り」のコントロールのことと思われがちですが、実はアンガーマネージメントとは、怒りだけではなく、怒りを含めた「気持ちの適切な取り扱い方を学ぶこと」なのです。ひだまりルームでは、アンガーマネージメントの手法を用いた「気持ちの取り扱い方」についても教えています。
怒りは「二次感情」と言われています。「二次感情」とは、ある感情(「一次感情」)が発生した後に生じる感情のことです。「怒り」として表面に見えている部分は氷山の一角で、その下には「悲しい」や「不安」、「悔しい」などの感情があります。それらが積み重なることで、「怒り」として表出されます。また、人間には「~したい」という自分の「欲求」が存在します。その欲求が叶わなかったことで一次感情が発生し、その後に二次感情として怒りが生じるのです。
例えば、友人と映画を見にいく約束をし、相手が待ち合わせに遅れてイライラした場面。このイライラの下には、相手の身を案じた不安や、映画に遅れるという焦りが一次感情としてあるかもしれません。また、さらにその下には「映画を時間通りに見たい」という欲求があると考えられます。しかし、相手が遅れている状況だと自分の欲求が叶わず、一次感情(不安や焦り)が積み重なり、二次感情として「怒り」が生じるのです。
怒りは一般的に良くない感情と考えられがちですが、もともと人に備わっている必要な感情の一つです。怒りがあることで、自分を害そうとするものから身を守れたり、自分のことを見直せたりします。怒りはしばしば暴力や暴言として表現されることがありますが、それは表現方法が間違っているだけなのです。そのため、怒りを我慢したり、押さえつけたりするのではなく、適切に表現していくことが重要です。
怒りを適切に表現するためには、まずは自分の欲求や一次感情を知らなくてはいけません。しかし、まだ発達段階の途中にある子どもたちは、自分の気持ちや欲求に気づくことが難しく、そもそも気持ちを表現する語彙を知らない場合もあるでしょう。
ひだまりルームでは、表情ポスターや表情カードといった言葉以外の方法で自分の気持ちを表現できるツールを用意しています。そのようなツールを使いながら、子どもたちが自分の気持ちへの理解を深めていき、だんだんとそれを言語化できるようにサポートしていきます。また、自分の気持ちを表現するためには、環境も重要になってきます。落ち着いて話ができる場所はどこか、誰なら話しやすいかなども一緒に相談して決めます。そうして、やっと適切に自分の気持ちを表現する準備が整うのです。
気持ちを我慢し続けると自分でも気づかないうちにストレスが溜まっていきます。そして、後々限界を迎え、爆発することもあるでしょう。そうなると、傷つくのは自分自身だったり、周りの人だったりします。聖学院小学校の子どもたちには、自分の気持ちを我慢するのではなく、正しく表現する方法をぜひ身につけていってほしいと願っています。
スクールカウンセラー 川村 郁子
(学校だより けやき 第550号2024年10月29日発行)