今年の1月1日の朝は、美しく澄んだ青空がまぶしく輝いていていました。昨年は地震や豪雨などの自然災害に見舞われたことで甚大な被害が発生し、被災地では今なお多くの方々が厳しい避難生活を余儀なくされています。また、世界のあちらこちらで終わりの見えない争いが続いています。それでもなお、神様による本当の希望が与えられると感じられるような、晴れ渡った元日の空でした。
何となく 今年は良いことあるごとし
元⽇の朝 晴れて⾵なし
『悲しき玩具』に収録されている石川啄木の短歌を思い出しました。たった三十一文字の言葉の中に貧困と病に苦しむ啄木が、それでも希望を感じられるような風もなく爽やかに晴れ渡った元日の朝の様子が浮かび、「言葉」の持つ力を感じます。
2025年を迎え、どこのご家庭でもカレンダーを新しくされたことと思います。我が家の中で私が一番よく見る台所のカレンダーは、毎年、星野富弘さんの詩画集のものと決めています。今年は特別な思いを持って元日から毎日カレンダーを見ています。なぜなら、星野富弘さんが昨年の4月 28日に召天され、もう新しい作品に出会うことができないからです。
1946年、群馬県勢多郡東村(現みどり市東町)に星野富弘さんは生まれました。群馬大学教育学部を卒業後、中学校の体育教師となり、クラブ活動(器械体操)の指導中、模範演技で空中回転をし、誤って頭部から転落、頸髄を損傷。24歳で首から下の自由を失います。入院中、口に筆をくわえて文字や絵を書き始めたのをきっかけに創作活動をスタートさせ、一つの作品の中に花の絵画と詩が盛り込まれた「詩画」と呼ばれる作品を生み出しました。また、苦しみ、痛みの中で神様と出会って受洗。多くの人が、その美しい花の絵と紡がれる詩に勇気や感動を与えられています。たくさんの「詩画」の中で、私の心に一番響いたのは「くちなし」の絵に添えられた詩です。うまくいかないことがあると、ついつい人のせいにして悪口を言いたくなってしまう心に突き刺さる詩です。
鏡に映る顔を⾒ながら思った
もう悪⼝をいうのはやめよう
私の⼝から出たことばを
いちばん近くで聞くのは
私の⽿なのだから
混とんとした「こころ」を「言葉」で表現する力は、神様が人間だけに与えてくださったものです。だからこそ、まずは私たちが美しい、人を生かす「言葉」を使い、子どもたちにも伝えていかなければと感じます。2025年、国語や表現の時間だけでなく、どんな時にも子どもたちが豊かな表現者として「言葉」を大切にできるよう支えていきたいと思います。
「命を愛し、幸せな⽇々を過ごしたい⼈は、⾆を制して、悪を⾔わず、唇を閉じて、偽りを語らず、悪から遠ざかり、善を⾏い、平和を願って、これを追い求めよ。」
(ペテロの⼿紙Ⅰ 3章10〜11節)
校長補佐 相浦 智