これからの図工

 4月に始まる新学期に向けて、図工室の整備をしていた3月。時期が若干ずれることはあるとしても、今までと同じように始業式や入学式を行い、今までと同じように教室で子ども達と一緒に授業ができるものとばかり思っていた。ところが休校の期間は予想以上に長引き、今年度の図工の授業も他の教科同様にメールを使ってのスタートとなった。担任の先生を通してメールで課題プリントを配布し、子ども達は完成した作品の写真を提出するという方法だったが、絵の具やスケッチブック、クレヨンも子ども達の手元にあるかもわからない状態。家にあるもので何ができるだろうと試行錯誤しながらの課題作成だった。「この説明でわかるかなあ」「楽しんで作ってくれるかな」制作の様子を見ることができず、もどかしく思うこともあったが、そんな不安を吹き飛ばしてくれたのがメールで提出されてくる作品の写真だ。一つひとつを見ながら、感心したり笑ったり。一人で頑張った作品、お家の人と仲良く作った共同作品、作品の写真も工夫されたものが多かった。課題にぴったりなものを探して家の中を走り回る様子が目に浮かんだ。もしかしたら、お母さんの方が作品作りにハマったのではと思うものもあったり、子どもの作品に混ざって担任の先生の作品が送られてきたりして、目に見えない不安の中で心の中があたたかくなったのを覚えている。各学年1週間に一つの課題というペースだったが、三つ目の課題を出した頃、提出された作品をみんなで共有したいと考え、ホームページで紹介していくことにした。提出された作品がそのままでは作った子ども達も張り合いがないのは当然だし、見る側にも作品の一つひとつに作者の思いが込められていることを実感して欲しかった。反応はすぐにあった。会えない友達の作品に喜ぶ子、刺激を受けて次の課題を頑張る子、遠くに住む祖父母に見てもらえたと報告してくれた子、そんな言葉から学校で一緒に授業をしていた子ども達の姿が見えてきた。実際には会えないけれど、メールやホームページを通して子ども達と繋がることができたと私たちも実感することができた。

 今回の休校時はリアルタイムでオンライン授業などを行う同期型ではなく、非同期型の掲示板型での課題提示だった。当然それぞれに長所と短所があるわけだが、掲示板型の最大のメリットは、学習の時間を子どもに委ねるというところにあるだろう。その子にとって最適な時間に課題に取り組めるようにそれぞれの家庭で学習のサイクルを決めることができる。図工のような教科にとっては、好きな時間に好きな場所で作品作りに取り組めるなんてことは学校の授業では中々経験できないことだ。結果、生活に結びついた面白い作品が生まれていた。ただ、限界を感じたのも事実だし、保護者の方々の負担も相当のものだったろうと思う。また、ホームページに作品の写真を並べることで互いの作ったものを鑑賞することができたことも大きな変化だ。更にこれがクラスの仲間とコメントやメッセージを交換するなどのビジュアルコミュニケーションに発展させることできたら素敵だ。

 今年度の「作品展」も今までとは違った形で行うことになった。展示は例年と同様に校内全体を使って行うが、保護者の方にはホームページで鑑賞していただくこととした。作品を実際に見ていただくことができないのは本当に残念だが、いつも学校に来られない方々に都合の良い時間に楽しんでいただける良い点もあると思う。家族全員で一緒に鑑賞したり、離れた親戚や友達にも見てもらい、作品について語り合うこともできるのではないだろうか。もちろん校内の作品展が終了しても見ることができるので、今までとは違った形で聖学院小学校の「作品展」をたくさんの人に楽しんでもらえたら嬉しい。
 先日、6年生に今年の作品展のテーマについて考え、プレゼンテーションをしてもらった。その中に「コロナ禍のなかで聖学院小学校の作品を配信して、みんなに元気になってもらいたい」「作品を通して、いろんな人とつながりたい」「きれいな色を見て、元気になってほしい」という言葉があった。私達がステイホーム中にアートを通して元気をもらったこと、アートで世界の人と繋がることができること、アートにはいろいろな可能性があることに気づきはじめたことが子ども達の言葉から伝わってきた。そして、自ら実践しようとするエネルギーにおどろかされた。  

 今回の体験を経験して「人と人、人とものが関わりあう」対面型の授業が普通と思っていた図工も、大きく変わっていかなくてはならないと感じた。子ども達一人ひとりにどんな時であっても学びを保証していかなくてはならないのだから。今はまだ試行錯誤の段階だが、今後、図工教育も教室で行う授業だけでなくオンライン授業とバランスよくミックスした学びを練り上げていく必要があるだろう。

校長補佐 / 図工担当 関 幸子

(学校だより けやき 第506号2020年10月22日発行)