2020年度を終えるにあたって

 2020年度がまもなく終わろうとしています。

 今年度、新型コロナウイルスによる休校期間を経て、子どもたちが初めて登校したのは2年生以上が6月9日、1年生が6月10日でした。もちろん、初めて登校することに緊張もあったと思います。けれども子どもたちの笑顔は不安より登校することの嬉しさが上回ることを証明してくれました。それまでは画面の中でしか会うことができなかった友だちに、実際に会うことができたことがよほど嬉しかったのでしょう。私はその時の子どもたちの笑顔は忘れることができません。

 それから約9ヶ月。今年に入っての感染者急増、緊急事態宣言の再発令もあり、いつまた学校を閉じなければならないかと気をもむ日々でしたが、幸いにして学校を開き続けることができました。全ての宿泊行事を中止したことをはじめとして、ほとんどの行事は持ち方を変更せざるを得ませんでした。また平常の授業においても制限は多岐にわたりました。それでも学校を開き続けることができたことには大きな意味があります。

 それは学校とは子どもたちにとってかけがえのない居場所であり、学校で友だちや教師と一緒に過ごすからこそ育つことがあるからです。

 私は小学校の役割は心を育てることと学力を育てることが半々だと学校説明会等でお話してきました。聖学院小学校が一番育てたいと思っている「隣人のために何をすべきか、何をしたらよいかがわかる感性を伴った隣人を愛する心」は、友だちから喜ばれた経験、友だちからされて嬉しかった経験、よかれと思ってしたことが受け入れられなかった経験、友だちからされて嫌だった経験などを通してでないと、決して育つことはありませ ん。また、人生を通じて経験する人間関係にかかわる困難を乗り越える力も、けんかしたり、ぶつかったり、がまんしたりする経験によって育ちます。

 学力の面でも、人の意見に耳を傾け、受け入れつつ自分の考えもきちんと表現することができる力、すなわち対話力といったものは、友だちと一緒だからこそ伸ばすことができる力です。

 このように小学校の務めは友だちや教員と一緒だからこそ育つことを大切にし、教育活動を行うことです。

 新型コロナウイルスとの戦いはしばらく続きます。出口はまだ見えません。そのような中で新型コロナウイルス感染防止の対策を続けていくことはもちろんですが、同時に子どもたちの心の健康にも十分に配慮し、できる限り学校を開き続けたいと考えています。

 かつてだれも経験したことのないことが続いたこの1年、保護者の皆様には折々の学校の決断を理解し、ご協力頂きましたこと、改めて御礼申し上げます。

 次年度も子どもたちとご家族の皆様の上に神様のお守りと祝福がありますように、また6年生の子どもたちがそれぞれの進学先で充実した中学校生活を送ることができるようにお祈りいたします。

校長 佐藤 慎

(学校だより けやき 第510号2021年2月25日発行)