繋がっていくこと

 この時期、どこの小学校でも目にする風景があります。それは、きれいにならんだアサガオ。学校の中を塀越しに見て、懐かしく感じたり、花が沢山咲くかなと心配したり・・・
 毎年、毎年、見る風景です。花が咲き出すと夏休みが近いのだなあと感じます。
 日本のほとんどの小学校で、1年生がアサガオを育てて観察します。多分、保護者の方も育てたのではないでしょうか。先生達も育てたはずです。「アサガオ= 1年生」とみんなが思っていて、玄関先にアサガオの鉢が置いてあると「このお家の子は1年生なんだね。」と思わず笑顔になります。
 なぜアサガオなのか。それには色々な理由がありますが、その一つに育てやすいということが挙げられます。毎日お水をあげていれば、どの子の朝顔も元気に育ち花をつけてくれます。失敗することが少なく、みんなが家に持ち帰り、夏の終わりには種を取ることができます。取れた種は次の1年生にプレゼントされて、次の1年生がまたアサガオを育てるのです。毎年、アサガオのバトンが手渡されていきます。そして、この素敵な植物は、その名の通り、子ども達が登校するときに花を開いてくれるのです。自分の鉢を見て花が咲いていると大喜び。子ども達の嬉しい声が響きます。他の学年の子も楽しみに花を見て通り過ぎます。学校中の子ども達がアサガオの花に元気をもらって1日をスタートさせることができるのです。
 以前1年生を担任した時、毎朝、定規を持ってツルがどれくらい伸びたか観察した男の子がいました。指示されたわけではなく、授業で夜中に伸びるツルの様子を映したビデオを見て関心を持ったのです。家に持ち帰ってからも、朝晩の観察を続け日記を提出してくれたことを覚えています。そんな彼も今は大学生となり、研究職を目指しているようです。アサガオはたくさんの「気づき」を与えてくれる教材なのだと思います。

 今年の1年生のアサガオはどうでしょうか。生活の授業で5月に小さな種を蒔き、たくさんの葉っぱが広がりました。1年生のみんなはもっともっと大きくなるように、ツルが伸びるようにと毎日お水をあげています。まっすぐ伸びないツルを支柱に巻きつけ支えてあげる大切な仕事も忘れてはいません。6月の半ばごろから、少しずつが可愛い花が咲き始めました。先日、図工の時間にアサガオの絵を描きました。葉っぱの形をよく見てみんな一生懸命描いていました。「この葉っぱは並葉、こっちはせみ葉だよ。」「みんなよく知ってるね。先生は1年生の時そんなことしらなかったよ。すごい!」絵を描きながら、友達の声を聞いていろんなことに気づいていきます。ツルの先はどうなってるの?何枚ぐらい葉っぱはついているの?花のつぼみは?あっという間の2時間でした。生活の授業で作ったアサガオの花の折り紙をつけて完成。1年生の時しか描けない絵です。
 アサガオは英語の授業でも活躍しています。聖学院小学校では、CLILという学習法を取り入れています。英語で他教科を学ぶ方法ですが、1年生は朝顔を英語でも学び、絵本にまとめていきます。植物の成長に関する知識と英語力の両方を子ども達は習得していきます。また、今年度はSDGsの授業でもアサガオ取り上げました。ゲストティーチャーを迎えて朝顔の土の中の様子を観察し、私たちの生活になくてはならない「水・土・空気」について学習を深めました。

 今回は1年生の生活の授業の一部を紹介しましたが、聖学院小学校ではどの学年も教科を超えて学びを深めています。そして、それらは繋がっていきます。横だけでなく縦にも・・
 その結果は直ぐ見えるものもあればそうでないものもあるでしょう。ずっと大人になってから、今学んだことが生かされることさえあります。だから、教育というのは素晴らしいのだと思います。

 さあ、夏休みがスタートします。家に持ち帰った朝顔を大切に育ててください。たくさん花が咲くといいですね。種ができたら次の1年生にプレゼントしてください。
 今までみんなの先輩が続けてきたことが、これからもずっとずっと続くように。

校長補佐 / 図工担当 関 幸子
(学校だより けやき 第515号2021年7月15日発行)