「秋」と「後期」を迎えて

秋だけの表現

 まだ暑い日もありますが、真夏のような芯のある暑さはもう峠を越えたことを感じます。秋は「なにをするにもいい季節」と言われるように、よく「   の秋」という表現が使われます。
例えば、
「食欲の秋」豊かでおいしい食べ物の収穫の季節
「読書の秋」暑くなく落ち着いて本が読める
「スポーツの秋」涼しくなり気持ちよく汗を流せる

 それぞれ秋の持っているイメージが、実りであったり、過ごしやすさであったり、落ち着きであったりするイメージと重なるからだと思います。
 この「   の秋」という表現はほかの季節にはない、「秋」にだけある特別の表現です。

秋の深まり

 季節はいつも進行形ですが、秋にだけ「深い」という表現が使われます。「深まる」という言葉には「理解が深まる」「友情が深まる」「愛が深まる」のように、熟し、本質に近づくようなイメージがあります。そのような特別なことばとセットになる唯一の季節が「秋」。「秋が深まる」と聞くと、なにか少し緊張感のある特別な気持ちにもなってきます。

秋は大切なとき

 「一日千秋(いちじつせんしゅう)」ということばがあります。ここでの「秋」は「年」という「とき」をあらわす意味で使われているので「千秋」は 「千年」という意味。待ち遠しくて一日がまるで千年のように感じられるという思いを表しています。
 生きる残るか滅びるか絶体絶命のときを「ききゅ うそんぼうのとき」と言ったりします。漢字で書くと、最後の文字は「時」ではなく「秋」と書き、「危急存亡の秋」となります。一番大切な「とき」は一番大切な季節である「秋」の字を充てることで、そのことばの重みが伝わってきます。
 昔の人は、命を支える食べ物の収穫期である 「秋」を一年で一番大切な「とき」と考えていたことがわかります。

秋は始めるきっかけ

 このように、四つの季節の中でも特別な季節「秋」がやってきました。それと同時に聖学院小学校では後期がスタートします。前期が終わり、後半戦のスタートですから、あらためてがんばろうという新しい気持ちが強くなる季節です。

「   の秋」

 みなさんならここにどんなことばを入れますか。いくつ書けますか。後期がスタートするこの時期 に、ぜひご家族で考えてみてください。

秋を楽しむ

 「秋」という季節そのものを楽しむのもいいかもしれません。秋の色や形、音やにおい、味や触感… 神さまからいただいた「五感」をフルに活かして、深まる秋を感じてみるのも楽しそうです。家族それぞれ、どんなところに秋を感じるかを聞いてみる と、いろいろな秋の感じ方や見つけ方を教えてくれることでしょう。  
 おいしい新米を食べながら、お店にならぶ色鮮やかな野菜や果物を見ながら、昔の人がどうして秋を一番大切な季節としたのかということも、考えてみるのもいいかもしれません。  
 いつも読まない種類の本に挑戦して「読書の秋」の醍醐味を実体験してみるのも楽しそうです。  

 秋という大切な季節をくださった神さまに感謝しつつ、秋を体全身で感じ、味わい楽しんで、これから始まる後期の学校生活をさらに深めていってほしいと思います。

教 頭 田 村 一 秋
(学校だより けやき 第516号2021年9月29日発行)