協同学習の取り組みについて

「神から与えられた賜物と身につけた知識、技能を自分のためだけでなく、他者のためにも用いる人を育てる」です。2023年度の聖学院VISONに掲載されている小学校の教育目標です。

「ねえ。玉結びってどうやってやるの。」
「わからないんだよね。なんか止めるところが長くなる。」
「私もわからない。教えて!」
「いいよ。見ていて。」
周りの子が頭を近づけて、手本となる友だちの指の動きを真剣に見ています。家庭科の授業の一場面です。このように子ども達が教え合う姿は、昔からどのクラスでも見ることができる教室の風景だと思います。
 昨年度から聖学院小学校では教職員研修会で外部講師をお呼びして、グループ学習の一部である「協同学習」を学んでいます。子ども達が学び合う学習をさらに深めるために「協同学習」の定義や技法を身についていくことが目標です。
 「きょうどう」の漢字は「協働」「共同」「協同」などがあります。簡単に説明すると「協働」は協力しながら働くこと。「共同」は二人以上の人が一緒に行うこと。「協同」は力を合わせて一緒に物事を行うことを示しています。小学校の「きょうどう学習」を語るとき、どの漢字を使うべきなのか迷う方も多いのではないでしょうか。

 文部科学省が学習指導要領で示している「協働学習(Collaborative Learning)」は、「子どもたち同士が教え合い学び合う協働的な学び」と定義されています。
 聖学院小学校が取り組んでいる「協同学習(CooperativeLearning)」は、米国で19世紀ジョンソン兄弟やスペンサー・ケーガンなどの研究者たちがそれぞれの定義を基に実践を広めてきました。グループ学習をしますが、友だちと一緒に活動する中で大切にしている定義があるのが特徴です。

1 互恵的な協力関係がある
  お互いがプラスになるように協力し合う、”Win Winの関係”
2 学習集団の目標と学習活動における個人の責任が明確である
  友達と学びのために自分が責任を持つ、”タダ乗りは禁止”
3 生産的相互交流が促進されている
  目標に向けて役割分担や助け合い、”協力する”
4 活動の同時性が配慮されている
  自分のため、友だちのためになった、”振り返りをする”

代表的な協同活動技法(ストラクチャー)として、「雪玉転がし」があります。この技法は、できるだけ多くの考えや情報を集めるのに効果的で、4人のメンバーの持つ多様性のメリットとして活かせます。漢字学習で「魚へん」の漢字をできるだけ多く考える問題が出題されたときに、以下のような流れで行います。
ステップ1 各グループメンバーは、自分一人で考えた答えや情報をリストアップします。
ステップ2 ペアになって互いに自分のリストを説明し合い、二つのリストをまとめて一つを作成します。重複しているものは一つだけにします。
ステップ3 ペアとペアが集まり、ステップ2と同様に一つにまとまったリストを作成します。重複しているものは一つだけにします。
 一人では限界はあるけれど、四人で力を合わせると、多くリストを作ることができます。

「逆雪玉転がし」という技法もあります。「雪玉転がし」では、グループの作成するリストがどんどん多くなっていきますが、「逆雪玉転がし」ではリストがどんどん小さくなっていきます。
 社会の授業で、次のお札が変わるときに1万円札、5千円札、千円札にどんな人物が相応しいか、みんな考えてみようとした時に、以下のような流れで行います。
ステップ1 各グループメンバーは自分一人で考えた答えや情報をリストアップします。
ステップ2 ペアになって、互いにリストを説明し合い、一番良いと思うものだけを載せたリストを作ります。
ステップ3 二つのペアが一緒になって四人で、ステップ2を繰り返します。そして、最後にどの人物が相応しいか、各グループで発表していきます。
このような「協同学習」を通して、自分の学びが仲間の役に立つ、仲間の学びが自分の学びにも役に立つことを体感します。そこに、真剣に学ぼうとする姿勢が育っていくのです。

 これからの時代に生きていく子ども達へ私たち教師が、まず変わっていかなければならないと感じています。一方的に「教える」ことから、「育ちの支援」へと、変えていかなければならないと感じています。子どもたちは、たまに失敗することはあるかも知れませんが、周りにいる大人も協力し合って、子どもの成長をみんなで見守っていくことが大切になってきます。
 そして、聖学院小学校を卒業した子どもたちが、世界の人たちと協力して一人ひとりにとって居心地が良い世界をつくっていけるようにと願っています。

「ひとりよりもふたりが良い。 共に労苦すれば、その報いは良い。 倒れれば、ひとりがその友を助け起こす。 倒れても起こしてくれる友のない人は不幸だ。 更に、ふたりで寝れば暖かいがひとりでどうして暖まれようか。 ひとりが攻められれば、ふたりでこれに対する。 三つよりの糸は切れにくい。」                   
                    (コヘレトの言葉4:9-12)

教務部 濱住 聖史
(学校だより けやき 第538号2023年9月27日発行)