モヤモヤしてみよう

 図工が算数などの他教科と違うところは、「間違いがない」ところです。算数のように一つの答えを出すのではなく、子どもの数だけ答えがある教科が図工です。子ども達一人ひとりが楽しんで描いたもの、作ったもの、全てが正解。ただ、無限に広がっては収拾がつかなくなってしまうので、課題によって描く題材を決めますし、身につけてほしい知識とか技術を指導に入れていきます。それを使って子ども達は表現を広げていきます。
 また、図工の授業は子ども達が自分自身を出せる時間であるべきだと思っています。それには自分自身を出しても大丈夫な雰囲気がクラスにあることと子ども達と教師の関係が重要になってきます。「教師が子ども達の気持ちを受け止めてあげることができているか」このことは私達教師が日常心がけていることです。色々な材料や道具を使っていると「あらら・・・」「よくお話聞いて!」なんて場面もしばしば。でも、そう言いながらも、その子の活動や行動を認めてあげていくことが大切です。私の発した言葉を聞いた他の子の声が教室に響きます。「失敗は成功のもとだよね!」私も大きな声で答えます。「その通り!」

 さて、3月末に行われた協同学習の研修会のことです。
 「今の先生は子ども達がモヤモヤしていることをおそれている人が多いように思う。
モヤモヤすることはとても大切です。モヤモヤしていて良いのです。」
 講師の先生がおっしゃった最初の言葉です。
 「今日の研修会を終えてもスッキリして帰る必要はないです。」
 という講師の先生の言葉にドキッとしたし、身が引き締まる思いがした瞬間でした。
 教えることが大好きな私達教師は、モヤモヤしたまま子ども達が帰宅しないようについつい手を差し伸べてしまいます。もしかしたら、すっきり解決して帰れるようにヒントを簡単に与えてしまっているのかもしれません。そして家に帰ると今度はモヤモヤを解決したいと思っているお母さんやお父さんが待っているなんてこともあるでしょう。案外、子ども達は時間がかかっても自分自身でモヤモヤを解決したいと思っているかもしれません。

 図工ではどうでしょうか?
 なんとなく指導する側もされる側もモヤモヤしたままスタートしたなんてことは結構あるような気がします。「どんなものが出来上がるだろう」モヤモヤの先に素敵なものがだんだん浮かび上がってくるものです。もちろんモヤモヤのまま終わってしまうこともあります。時々、すっきりした感じでスタートしたのにモヤモヤして終わってしまうなんてことも・・・休み時間にはモヤモヤを抱えた5、6年生がやってくることもあります。
 図工は安心してモヤモヤできる教科です。スケッチブックをめくると、子ども達のモヤモヤが見えることがあります。次のページにも・・・そしてやっとスッキリ晴れた作品が現れると「おー、やったじゃない!」思わず呟いてしまいます。スケッチブックに残ったモヤモヤにはその子のやりたいことや努力やプライドが見え隠れします。自分で納得できた時に次に進んでいく様子がわかります。
 子ども達はモヤモヤを自分で解決する力を持っているし、時間がかかっても自分自身でモヤモヤを解決したいのです。大人はそれを待ってあげるべきなのでしょう。

 今年度の作品展はいかがでしたか?すっきり自信にあふれた作品もモヤモヤが詰まった作品も皆さんを笑顔にしてくれたと信じています。今年度もあと4ヶ月。モヤモヤすることをおそれずに素敵な作品を作って欲しいと思っています。

校長補佐/図工 関 幸子
(学校だより けやき 第540号2023年11月27日発行)