心の声に耳を傾ける日を

 「世界メンタルヘルスデー(World MentalHealth Day)」をご存知でしょうか。
世界精神保健連盟が、1992年よりメンタルヘルス問題に関する世間の意識を高め、偏見をなくし、正しい知識を普及することを目的として、10月10 日を「世界メンタルヘルスデー」として定めました。
 その後、世界保健機関(WHO)も協賛し、現在では正式な国際記念日とされています。定められてから20年以上が経ち、少しずつメンタルヘルスに対する意識は変わってきています。日本では、「つながる、どこでも、だれにでも」をテーマに、東京や横浜でのトークイベントや、東京タワーのシルバーライトアップなどが普及啓発のために行われています。しかし、残念ながらまだ偏見や理解不足が残っています。

 そもそも、メンタルヘルスとは何でしょうか。メンタルヘルスとは、「心の健康」のことです。体の不調と異なり、心の健康状態は自分でもなかなか気づきづらいときがあります。
 また、心と体は密接な関係にありますから、心の不調が体の不調としてあらわれることもあります。そうして、体の不調をきっかけとして初めて自分の心の健康状態を見つめ直すこともあるでしょう。
 特に、日本では、心の不調や病気を周りの人に言いづらい、知られたくないと隠してしまう傾向があります。大人でもそうなのですから、成長過程にある子どもたちはさらに自分の心の状態に気がつくことが難しくなります。

 では、どのようにして心の不調が起こるのでしょうか。原因は決して一つではありませんが、例えば、子どもの心に影響を与えるものとして、クラスの状態や友人関係が挙げられます。そこで、聖学院小学校では、「hyper-QU」というアンケートを活用しています。
 hyper-QUとは、子どもたちの学校生活における満足度と意欲、学級の状態を調べることができる質問紙です。また、対人関係能力(ソーシャルスキル)をどの程度身に付けているかも測ることができます。毎年実施することで、子どもの成長や変化も見ることができます。
 聖学院小学校では、このhyper-QUを毎年、新しいクラスに慣れた頃の5~6月、後期が始まって落ち着いた頃の11~12月に、それぞれ実施しています。この結果から、クラスや学年の特徴や傾向を把握し、時には過去の結果と比較しながら、クラス経営を見直したり、子どもへの支援を考えたりしています。
 また、子どもたちにとっては、このような質問紙に回答する機会を作ることで、普段は意識していない自分の気持ちや意欲、行動について振り返るきっかけになってほしいと思っています。

 子どもたちが「なんだか眠れないな」「最近やる気が出ないな」「食欲がわかないな」と感じている時は、心の不調のサインかもしれません。
 また、体の不調を訴えている時には、「今、あなたの心は元気かな?」「何を感じているかな?」と、心の調子も問いかける時間をぜひ持ってほしいと思います。
 きっかけはどんなことでも構いません。気づいた時に、自分や周囲の人の「心の声」に耳を傾けてみてください。

 スクールカウンセラー 川村 郁子
(学校だより けやき 第539号2023年10月27日発行)